検索意図:何が「半分だけ通る」のか
ユーザー側から見える典型は次のような段階的な不調です。本体のインターネット接続テストは成功するのに、PlayStation ストアのカタログや購入フローだけが極端に遅い。あるいはパッチのプログレスバーが 0% のまま、しばらくしてタイムアウトやエラーコードへ進む。オンラインではロビーに入れない・マッチング待ちが異常に長い一方、シングルプレイやオフライン機能は問題ない、というパターンもよく聞かれます。
これらはすべて「回線が完全に死んでいる」より、特定のホスト集合だけが別経路・別 DNS 解決結果になっているときに起きやすい挙動です。Clash/Mihomo では ドメイン単位のルールと DNS モジュールが一体で効くため、「ブラウザでは速いが本体アプリだけ遅い」より一歩踏み込んで、PSN 周辺と CDN 周辺を層状に分けて観測するのが近道になります。
通信の層:PSN 本体・ストア・パッチ CDN
ざっくり言えば、PlayStation の利用体験は少なくとも次の面に分けて考えると切り分けやすくなります。(1) アカウントと PSN セッション(サインイン、トロフィ同期、フレンド/パーティのシグナリングなど)、(2) ストアとコンテンツメタデータ(表示、検索、決済フローの手前まで)、(3) 大容量のダウンロード/差分パッチ(CDN 上のオブジェクト取得)。
(1)(2) がプロキシ側、(3) が ISP 直結の DIRECT に落ちている、あるいはその逆、といった非対称な割り振りがあると、「画面は出るが買えない」「買えたがダウンロードが始まらない」といった途中で詰まる症状に見えます。実ホスト名はサービス更新で変わり得るため、購読ルールセットに PlayStation/Sony 用のカテゴリが付いていればそれを優先し、ログに出た新しいサフィックスだけを足す運用が安全です。
典型症状とログでの見え方
まず PC だけで同じプロファイルを使い、公式の PlayStation 関連ページやヘルプが問題なく開けるかを確認します。次に PS5 を同じゲートウェイ配下に置き、症状が出る操作(ストアを開く、小さめのフリープレイを入れる、システムソフトの更新を試す)を実行しながら、Clash の接続一覧やログで playstation、sony、akamaized、cloudfront などのキーワードをフィルタします。
ここで「同じ操作のはずなのに、ホスト名ごとに出口ポリシーがバラバラ」になっている場合は、ルール順か DNS が第一疑いです。逆に、ログにほとんどヒットが出ない場合は、TUN やシステムプロキシが下流デバイス向けトラフィックを取りこぼしている、本体が別 DNS を見ている、ゲートウェイが意図した機器になっていないなど、トポロジー側を疑います。
DNS:fake-ip、redir-host、フォールバック
PlayStation 系は、クライアントが複数ホストに並列でコネクションを張るタイプの処理が多く、fake-ip 構成では解決結果と実通信の対応が取りづらいケースが報告されています。コアやクライアントのバージョン、プロファイル次第では、該当ドメインだけ redir-host 相当に寄せる、nameserver-policy で別 DNS を割り当てる、といった調整が有効になることがあります。
重要なのは設定項目の暗記ではなく、「本体が実際にどの IP を向いているか」と「Clash がどのポリシーで転送したか」が一致しているかを見ることです。トラブルシューティング記事で触れているように、DNS キャッシュや OS のリゾルバ優先順位も混ざるため、変更後は PC/ルータ/本体の再起動やキャッシュクリアを挟んで再現テストすると差分が見えやすくなります。
Mihomo ルール順:ストアと CDN を同じ行にまとめない
コミュニティ版ルールでは「Sony」「PlayStation」「ゲームダウンロード」が別セットに分かれていることがあります。インポート順によっては、広い DOMAIN-KEYWORD 行が先にマッチし、細かい CDN 行が死んでいる、ということが起きます。対策はシンプルで、(1) より具体的なルールを上に積む、(2) 意図しないマッチを DIRECT に落としている行がないか確認する、(3) GEOIP や FINAL が早すぎないかを見直す、の三段です。
また、パッチ取得だけ帯域制限のあるノードに載せると遅くなる一方、認証だけ別ノードに載せるとセッション不整合が出る、といったノード選定の副作用もあります。まずは「出口を揃える」ことを優先し、安定してから帯域最適化を検討するのが安全です。
ルール例(参考スニペット)
以下はイメージ用の断片です。そのままのコピペではなく、購読中のルールセットと重複・順序を必ず確認してください。実名ホストは時代で変わります。
# Example snippets — adapt to your profile and rule order
rules:
- DOMAIN-SUFFIX,playstation.net,PROXY
- DOMAIN-SUFFIX,playstation.com,PROXY
- DOMAIN-SUFFIX,sony.com,PROXY
- DOMAIN-SUFFIX,sonyentertainmentnetwork.com,PROXY
- DOMAIN-SUFFIX,api.playstation.com,PROXY
- DOMAIN-KEYWORD,playstation,PROXY
# CDN / large object hosts often appear in logs — match what you actually see
- DOMAIN-SUFFIX,edgesuite.net,DIRECT
- DOMAIN-SUFFIX,akamaihd.net,DIRECT
実測では、パッチ URL が Akamai/CloudFront/自社 CDN などに振り分けられるため、上の「CDN を DIRECT」は自宅回線がその CDN に速い前提の例です。逆に ISP 経路が詰まっている環境では、CDN もまとめて PROXYの方が速い場合があります。ログのレイテンシと失敗率で決めてください。
トポロジー:PC 共有ホットスポットと旁ルート
PS5 本体にプロキシ設定を細かく入れられない前提は、ニンテンドー本体と同様です。現実的なのは、(A) PC のモバイルホットスポットやインターネット共有の下に PS5 を置き、PC 上の Clash がゲートウェイ機能を兼ねる、(B) ルータまたは OpenWrt 旁ルートで Clash を動かし、DHCP でデフォルトゲートウェイを旁ルートに向ける、のどちらかです。(A) の具体的手順の雰囲気はSwitch 2 向け記事と近く、(B) はOpenWrt 旁ルート記事で扱っているトポロジーをそのまま流用できます。
(A) では OS によってホットスポット下流のパケットが TUN に載らないことがあるため、症状が PC 単体とだけズレるときは有線共有や (B) へ切り替えて比較してください。(B) では IPv6 が旁ルートを迂回していないかも併せて確認すると、ストアだけ IPv6 経由で別出口に逃げるケースを潰せます。
TUN とシステムプロキシ:取りこぼしを減らす
ゲーム機トラフィックは HTTP プロキシだけでは拾いきれないプロトコルが混ざります。Mihomo 系クライアントではTUN モードを有効にし、ゲートウェイ機器自身のフォワーディングと整合させるのが一般的です。挙動の整理はTUN モード解説に譲りますが、「PC では速いが PS5 だけ遅い」場合はまず TUN の対象インターフェースとルーティングテーブルを疑う価値があります。
初回セットアップは入門ガイドに沿ってサブスクリプションを読み込み、プロファイルが安定してから本体側の検証に進むと、原因が「ノード品質」か「分流」かの切り分けがしやすくなります。
動作確認のすすめ方
次の順で段階的に試すと手戻りが減ります。(1) PC だけで同じプロファイルを使い、PlayStation 関連の Web が開けるか。(2) PS5 のネットワーク設定でゲートウェイと DNS が期待どおりか(自動取得でよい場合が多い)を確認する。(3) 小さな無料コンテンツや軽いデモのダウンロードから試し、ログに出たホストをメモする。(4) その後に大型パッチやマルチを試す。
いきなり数十 GB のタイトルで試すと、失敗時のログが埋もれやすいので、まずは数 GB 未満のコンテンツでルールと DNS が揃ったかを確認するのがコツです。
知っておきたい限界:NAT タイプと UDP
パッチやストアの改善と、オンラインマルチの安定はイコールではありません。一部タイトルはピア接続や UDP を多用し、プロキシ経由だと NAT タイプが厳しく見える、中継サーバに寄るため遅延が増えることがあります。それは Clash の行単位のミスというより経路の物理的な制約に近いです。
「ダウンロードは直ったがマルチだけ不安定」なら、マルチセッションだけ別トポロジー(ゲーム機だけ ISP 直結のサブネットなど)を検討するのも現実的な落としどころです。
規約と免責
本稿は家庭内ネットワークのトラブルシュートを目的とした技術メモです。利用規約やコンテンツの地域条件を迂回することを推奨するものではありません。ゲームサービスの契約・利用ポリシーは各自で確認してください。
PC ゲームランチャ記事との対照
Steam や Epic、Battle.net はランチャが OS 上で動き、ログからホスト名を追いやすい一方、コンソールは同じ「CDN が遅い」体感でもホスト集合がまったく別です。分流の考え方は共通しますが、Steam 向け記事のルールをそのまま PS5 に流用してもカバー率は保証されません。ログ駆動で足す姿勢が重要です。
まとめ
PS5 を Clash 配下に置いたときの PlayStation ストア/パッチ/オンラインまわりの不調は、PSN・Sony 系とゲーム配信 CDN が別出口に割れていること、DNS の解決と実通信がズレていること、TUN やゲートウェイ構成が下流トラフィックを取りこぼしていることの三つに集約されやすいです。購読ルールを信頼しつつ、ログに出たホストを基準にルール順と DNS を整え、トポロジーが PC 共有か旁ルートかで切り分けると再現実験が速くなります。
長く使えるクライアントとわかりやすい接続ビューがあると、この手の「本体だけ遅い」問題の原因特定がはるかに楽になります。ルールエディタとログが一体になった Clash/Mihomo 系は、その点で運用コストを下げやすいツールです。→ Clash を無料ダウンロードし、PS5 まわりの出口と DNS を一度まとめて整える